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【第二回】澁澤龍彥と唐十郎:「犬狼都市(キュノポリス)」から「盲導犬」『唐版 犬狼都市』へ(杉浦楓太)

◆発表者  杉浦楓太 ◆発表題目  澁澤龍彥と唐十郎  ――「犬狼都市(キュノポリス)」から「盲導犬」『唐版 犬狼都市』へ ◆発表要旨  澁澤龍彥「犬狼都市(キュノポリス)」は『聲』七号〔一九六〇年四月〕に掲載された、澁澤初期の短編小説である(当時の標題は「キュノポリス(犬狼都市)」。なお本梗概では以下「犬狼都市」と略称を用いる)。  安西晋二が、これまでの研究では「典拠に対する下位的・二次的なものとして「犬狼都市」を位置付ける」場合が多かったと述べているように、同時代の比較作業では「犬狼都市」は、ほとんどマンディアルグ「ダイヤモンド」、同「仔羊の血」との関連(特に前者)において論じられてきた。そのため「犬狼都市」が新たな創作の下地となった点についての先行研究は、管見の限りない。  唐十郎に二つの戯曲がある。一つは「盲導犬」で、これは中央公論社から出ている雑誌『海』四月号〔一九七三年四月〕が初出である。澁澤が「『盲導犬』は、私の『犬狼都市』のいわば後日譚」と解説を寄せているように、「犬狼都市」に登場したファキイルの名や一部の設定が受け継がれている。もう一つは『唐版 犬狼都市』で、北宋社から一九七九年五月に刊行されている。扇田昭彦は『唐十郎全作品集』第三巻〔冬樹社、一九七九年八月〕の「解題」で「澁澤龍彥の『犬狼都市』への唐十郎の執着」が「盲導犬」のみならず『唐版 犬狼都市』を生んだと述べている。  先述したように、マンディアルグの「ダイヤモンド」「仔羊の血」から澁澤龍彥へ――という縦の関係性については、これまでの研究において、すでに分析がなされている。われわれが、澁澤龍彥から唐十郎へ――という縦の関係性にも着目してもよい時期にきたのではないか。  本発表では比較を通して「犬狼都市」が唐の二作品にどのように影響しているのかを分析したい。 ◆発表日時  2021年6月12日(土)、14:00~