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【第九回】大泉黒石の70~80年代受容:由良君美による紹介を端緒として(山本歩)

  ◆発表者   山本歩 ◆発表題目   大泉黒石の70~80年代受容  ――由良君美による紹介を端緒として―― ◆発表要旨  大泉黒石は戦後、ほとんど忘れ去られた作家であったが、1970年代になって志村有弘、そして由良君美の手によって再発見された。令和現在の黒石受容(というものがあるとすれば)も、概ね70~80年代のそれを継承している。  そして、緑書房『大泉黒石全集』全9巻(1988年)の刊行は、由良(1990年没)の最晩年の仕事のひとつでもあった。  黒石文芸が今日も読まれる機会を保っているのは由良の功績であるが、別の観方をすれば、黒石の存在は英文学者・由良の業績に奇妙に食い込んでいる。  由良の人脈により、1972年に桃源社から『黒石怪奇物語集』『人間廃業』が復刊され、また『ユリイカ』や『幻想文学』にも黒石が紹介された。  他方、それはどうしても、当時の〈異端文学〉〈幻想文学〉〈怪奇文学〉というカテゴリーに絡め取られるものでもあった。  由良が主張したレトリックの問題、「混血」の「デラシネ」的悲哀は、いささか希釈され、黒石は怪奇小説として「大正デカダンス」の範疇に収まったようだ。本発表では黒石の没後評価を考える上で無視できない「由良君美にとっての黒石」及び「70~80年代の怪奇幻想文学への注目」を取り上げ、その連絡や齟齬を理解したい。 ◆発表日時  2022年2月27日(日)、14:00~