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【第一〇回】澁澤龍彥の変身譜:『変身のロマン』の編纂者から変身物語の書き手へ

◆発表者  劉佳寧 ◆発表題目  澁澤龍彥の変身譜  ――『変身のロマン』の編纂者から変身物語の書き手へ―― ◆発表要旨  澁澤龍彥編纂の幻想文学アンソロジー『変身のロマン』(立風書房、1972年)はその前年に刊行された『暗黒のメルヘン』(立風書房、1971年)の続篇であり、変身(メタモルフォーシス)の主題をめぐる古今東西の作品を収録した一巻である。自作小説「マドンナの真珠」を『暗黒のメルヘン』に採録したように、『変身のロマン』ではエッセイ「メタモルフォーシス考」(『ユリイカ』1969年9月号所収)の再録が巻頭を飾っている。  「メタモルフォーシス考」では、変身した主体が移行する世界(動物・植物・鉱物の三界)に注目するという変身物語の読み方を提示しているが、『変身のロマン』には厳密には変身の物語ではない花妖の物語(蒲松齢『牡丹と耐冬』)や、恋する悪魔の変幻自在の超能力を描く作品(カゾット『悪魔の戀』)も収載された。  さらに、「編集後記」において、澁澤は次のような興味深いことを述べている――「結論にならない蛇足をつけ加えるならば、メタモルフォーシスということ自体、一つの比喩にほかならないのである。私の性来の変身譚好みも、もしかしたら、そんなところに原因を求めることができるのかもしれない」。澁澤はどのように小説の中の「変身」を理解し、それを一冊の選集にまとめたのか。また、『変身のロマン』を編纂した澁澤自身が変身物語の書き手である事実も看過できない。  本発表では『変身のロマン』の編集ポリシーを明らかにした上で、変身というテーマを扱う澁澤の小説群を系譜化したい。 ◆発表日時  2022年3月26日(土)、14:00~