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【第一七回】怪奇現象が生み出される場所:澁澤龍彥「髑髏盃」における鎌倉(安西晋二)
◆発表者
安西晋二
◆発表題目 怪奇現象が生み出される場所―澁澤龍彥「髑髏盃」における鎌倉◆発表要旨 澁澤龍彥は、18歳から、終生を鎌倉で過ごした。この地は澁澤にとって切り離せない場所である。2007年には、鎌倉文学館において企画展「澁澤龍彥 カマクラの日々」(4月28日~7月8日)が催され、澁澤龍彥と鎌倉というテーマが取り上げられた。ただし、この企画展で示された「カマクラ」は、澁澤龍彥自身が随筆等で語った風光明媚な風景や、彼の思い出などであろう。だが、澁澤の小説内(「きらら姫」「護法」「髑髏盃」「ダイダロス」)に描かれた鎌倉は、そういった自然や文化、記憶などに彩られたものとはいい難い。だからこそ、物語化されたその舞台のありようをあらためて考えてみる必要がある。
一般的に、鎌倉といえば、自然のみならず、寺社と歴史の融合する街として観光地化されたイメージがあるのではないだろうか。しかし、一方で鎌倉には怪奇現象が数多く発生する地としての認識もある。神沼三平太『鎌倉怪談』(竹書房、2022.10)では、「鎌倉は、怪異の起きる地でもある。狭い範囲に怪奇スポットが密集している」「風呂トイレ鎧武者付きと揶揄されるほど、武者の霊が出る土地―。怪談と日常が隣り合った土地」と述べられている。「武者の霊」である理由は、鎌倉という土地の歴史に密接である。
澁澤の小説に描かれた鎌倉は、思い出深い「カマクラ」でもなければ、もちろん観光地化された世界でもない。それは明らかに怪異の内に含まれる様相を呈していよう。そこで今回の発表では、特に武者と怪異の関連性が高い「髑髏盃」に焦点を当て、「怪異の起きる地」としての鎌倉という文脈から澁澤龍彥の小説を読み直してみたい。
◆発表日時
2023年3月18日(土)、14:00~