【第一八回】大泉黒石『黄夫人の手』における怪奇のありか:澁澤の幻想文学論を端緒として(山本歩)

◆発表者
 山本歩

◆発表題目
 大泉黒石『黄夫人の手』における怪奇のありか~澁澤の幻想文学論を端緒として~

◆発表要旨
 澁澤は「幻想文学について」(1970.4)において、カイヨワの幻想文学論を参照しながら「幻想文学」という曖昧な概念を、「近代の怪奇小説」や「SF」に接続されるものとして、いささかなりともクリアに提示しようとした。SFへの架橋は、科学=現実の時代を生きる作者/読者もまた「ファンタスティック(幻想)」を求めるのだという、幻想小説の普遍性を証ししようとするものでもあった。同様の主張を、奇しくも大泉黒石は「将来の怪談」(1925.8)で展開している。ウェルズ『水晶の卵』を引き合いに出しながら怪談のSF的可能性を論じた同記事は、黒石『黄夫人の手』(初出1920.1)の末尾改稿(1923.7)とも通底しているだろう。だが、だとしても同作がいびつで、整合性に欠ける作品であることに変わりはない。本発表では『黄夫人の手』のテクストを分析し、虚構内事実の整理を行うと共に、「怪奇」がどのような要素なり手法なりによって成立しているかを論じたい。その上で、外部からやってくるように見える恐怖が、実のところ我々の内部・近辺にそもそも付着しているのだという、黒石の基本的発想を明らかにしたい。

◆発表日時
 2023年5月20日(土)、14:00~
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